小説

女子トイレ争奪戦〜とあるテストの1日〜

「あーあ今日はテストかぁ大丈夫かなぁ、あたし…」
瑠奈が沈んだ声で呟く。

「大丈夫だって!瑠奈は一生懸命勉強してきたじゃん!きっとなんとかなるって!」
優奈は明るく言うと瑠奈の方をポンっと叩いた。

明るく茶色に髪を染めた瑠奈は普段はバスケ部のレギュラーとして部活を頑張っているからか、
なかなか勉強の時間が取れず少し苦手な意識があった。
だから昨日は夜遅くまで慣れないコーヒーを飲みながら一生懸命勉強をしたのだ。

一方の優奈は、成績優秀かつ素行も問題なし、おまけに学園祭の実行委員長などを務めるいわゆる優等生。
成績もほぼオール5を取っているのではないだろうか。この高校で一番いい枠の指定校推薦は彼女がほぼ手中に収めている。
まぁそんな優奈がついてるから少し安心なところはあるが…

「優奈に教えてもらったところばかり出るといいなぁ…」
「ちゃんと昨日教えたテストに出そうなところ復習した?」
「したよ!もう昨日は夜遅くまで大変だったんだから!あの辺りが出れば今日は完璧!」
「じゃきっと大丈夫!いい点取れるよ^ ^」
「あっ!昨日の夜一個だけわからないところあったんだよ。教室着いたら教えてくれる?」
「いいよー!」

そういって二人は校門をくぐり、教室に向かっていった。
ふたりはその時は気づくことはなかった。これから始まるテストという名の地獄を。

朝教室に着くと、空席が目立っていた。
不思議そうに優奈が呟く。
「あれーみんなどうしたんだろ。いつもテストの日は早く来て勉強してる子も多いのに…」
「ね、どうしたんだろう。」
瑠奈も続けて呟く。

「まぁいいや。優奈、さっきのところ教えてよ!」
「うん!」

ふたりは仲良く隣の席に座ると、机を寄せて優奈に質問を始めた。
10分後…。
キーンコーンカーンコーンー。

今日1度目の鐘が鳴り響く。
時計は8時55分を指している。予鈴だ。
それから2-3分して、教室にいなかったクラスメイトが、なぜか女子ばかりぞろぞろと戻ってくる。

よく見ると空席となっていたのは女子の席だけだったみたいで、テストが始まる9時の段階では全員が着席していた。

9時になり、教室が静かに静まり返る。
「よーし。はじめ!」
1時間目の国語のテストが始まった。

瑠奈と優奈の今日のスケジュールは3時間制だ。
9:00-10:10が国語
10:20-11:30が英語
11:40-12:50が社会
社会以降は特にカリキュラムはないため、そのまま下校となる。

この高校は英語の授業を特に重視しているので、時間も長く評価の基準も高い。
特にこの瑠奈たちのクラスは、指定校推薦やスポーツ推薦での進学を狙っている人が多い為、
今日のテストは緊張感がある日となっていた。

しかも瑠奈たちの3Fのフロアの高校2年生はもちろん、4Fの1年生も、2Fの3年生も今日はテストなので学校全体の空気がピリッとしている感じだ。

9:30が過ぎようとする頃…
集中して順調に問題を解いていた瑠奈は下腹部に違和感を感じた。
「あれ、なんだかおしっこ…」

ふっと一瞬尿意によって集中力が削がれる。
そういえば今日は朝からテストのことを考えていて、朝も早く起きてギリギリまで勉強していたため、
朝のトイレも入っていなかった。
瑠奈はトイレが遠いので、いつもは家でせずに学校に着いてから朝一のおしっこをするのだ。

「まぁいいや、まだ我慢できるし…今はテストテスト。」
尿意を押しやり、再び集中力を高める瑠奈。スラスラと解答用紙に記入できているのが気持ち良かった。

テスト終了3分前。すべての問題と見直しが終わった瑠奈は会心の出来だとほくほくしていた。
「やっぱり優奈はすごいなぁ。毎日ちゃんと授業聞いてるからなぁ。」
チラッと優奈の方を見る。

優奈ももう解き終わったのか、ぼーっと外を見ているようだ。
しばらく見ていると時折、手が下腹部のあたりを撫でたり、足を組み替えたりしている。

「優奈…トイレかな?あっ…」
優奈がトイレを我慢しているのではないかと思ったタイミングで自身の体からのサインにも気づく。
さっきよりもいくぶん強い信号が下腹部から発せられていた。

…もうちょっとだから我慢して。そしたらすぐトイレ行くから。
瑠奈は心の中で語りかけるとチャイムが鳴るのを待った。

キーンコーンカーンコーンー。
10:10。
先生が解答用紙を集める。

よし、ではここで休憩とする。
がその前にひとつ時間割変更の連絡だ。

え…なんだろう。瑠奈と優奈は顔を見合わせる。

知っているものも多いと思うが、今朝水道管が破裂した関係で男女とも3Fと4Fのトイレが使えない。
よってトイレに行きたいものは全員2Fのトイレに行くように。

混雑もするだろう。休み時間を少し伸ばすから間違えるなよー。
といって黒板になにやら書き出す。

「えーーーー!」
瑠奈は心の中で叫んでいた。
1学年300名のうち、約半分が女子でトイレの個室は各階に8室。
普段はそこまでトイレに困ることはないが、、今日の場合は純粋に3倍だ。
全学年450人で8室のトイレなんて…
急にさっきの試験の前に女子生徒ばかりがギリギリに教室に戻ってきた謎が解けた気がした。

先生が振り返る頃には黒板にはこう書かれていた。
10:30-11:40(英語)
12:00-12:50(社会)

よし、わかったものから解散!
その声と同時に生徒が、特に女子生徒ばかりが飛び出していった。
続いて瑠奈が、少し遅れて優奈が教室を飛び出した。
10:12。
女同士の戦いの火蓋が切って落とされた。

10:14。
トイレに到着した瑠奈は目を剥いた。
こんなに混んでいるトイレはみたことがないぐらい混んでいる。
一応トイレの入り口からフォーク並びで並んでいるようだが、どこが列の最後尾かもわからないような状態だった。

すぐ後ろを見ると足がそわそわと落ち着かなくなってきた優奈が青ざめた顔で行列を見ていた。
「とっ…とりあえず並ぼうか。」
瑠奈が優奈の手を引いて行列の最後尾に並ぶ。

列の前方を見ると3年生がずらり。
やはり2Fのアドバンテージは大きいようだ。

瑠奈たちはちょうど2年生の列の真ん中ぐらい。
そしてその後ろには、はるばる4Fからきた1年生がどんどん並んでいった。
短くなることを知らず、ただただ長くなっていく列。
目視で前には50名は軽く超えるぐらいは並んでるのではないか。
後ろに並ぶ優奈がぶつぶつと計算をしていた。
「えーっと、個室が全部で8室。女の子ひとりのトイレの時間は…えー瑠奈どのぐらいかな?」
「うーん。まぁ制服だからたぶん1分で終わるんじゃないかぁ。。」
「だったら…トイレに並べる時間がだいたい後10分で、個室をひとり1分で開けてくれたら…」
「80人!多分前のひと80人はいないよね?ギリギリトイレ行けそう!」
「うん!そう思う!てことはもうすこしの辛抱ね」
優奈はそう結論付けると少し安心した顔でそわそわと下腹部をさすり出した。

「優奈、さっきのテスト中からけっこうしたそうだったよね…?いつからしてないの?」
「んー、昨日の寝る前かな。0時前には寝たから…もう10時間以上溜まってる…!いやほんとにもうきついんだよね。さっきも最後の方ちょっと集中できなくてさ…」
恥ずかしそうに優奈が話す。

確かにいつも一緒にいることが多い瑠奈だが、トイレに誘うのは決まって優奈だった。

「私まだ余裕あるから、先行く?」
「えっいいの?」
「うん、大丈夫!」
「ありがとう!」

優奈と順番を代わる。
そわそわとした足踏みが止められないようだった。

「優奈、そんなやばいんだぁ?」
瑠奈はちょっとちゃかしてみた。トイレが遠い自分からするとじっとしてられずにそわそわしている優奈が可愛く思えてきたのだ。
くるっと優奈が振り返りいう。
「正直けっこうやばいよ。瑠奈ってほんとトイレ遠いよね。羨ましいよ」
「あたしの場合吸収が遅いのかなぁ。この前優奈とファミレス行ったときだって、ドリンクバーあんなに飲んだのに結局トイレ行きたくなったの家帰ってからだもん。でもその後はすごい頻尿だったよ。笑」
「あたしはファミレスの時点からすでに頻尿だったよ…笑」
「確かにそうだったね…笑」
ケラケラと優奈は笑っている。そんな姿を見て少しだけ安心した。

実は瑠奈には優奈にも言っていない秘密があった。
それは和式トイレでうまくおしっこができないこと。

たくさん我慢ができる瑠奈はおしっこの勢いと量が強く、一度解放してしまうとなかなか軌道修正ができないため、和式でのコントロールが効かなくなることが多かった。過去に体育祭のときに我慢に我慢を重ねてついたトイレが和式で止むを得ず使ったが、そのときも靴と下着をびしょびしょにしてしまった。
だから極力和式は使いたくなかったのだ。

瑠奈にとってはそれはすごく恥ずかしいこと。
だから優奈も言うことができずに、そっと心の中で思うのだった。
「神様。あたしには洋式のトイレを割り当ててください…」

ふと時計を見る。
10:20。並び始めてから6分が経過した。前にはまだ20名ぐらいの落ち着きのない女の子たちが並んでいる。
このペースで行けばなんとか間に合いそうだった。
どんどんトイレに近づいてくる。
10:20。優奈は女子トイレの扉の前まで来ていた。
まだトイレ内にも列はできているのがわかるが、少なくても今よりは派手に我慢の仕草をすることができる。
がちゃ。
ひとりでてくる。そしてまたすぐひとりでてくる。
ついに優奈と瑠奈は女子トイレの中に入ることができた。
中に入った瞬間、優奈は前かがみになりきつく閉じた太ももの間に手を入れて我慢をしていた。
トイレの流す音、匂い、個室の閉まる音、そしておしっこの音。
実際瑠奈もたくさんのおしっこをしていることを連想させることが五感を通じてわかるので尿意が急激に高まってきていた。
思わず小さく足踏みをする。
ふと前を見ると、優奈はもう完全に手を前に添えて抑えていた。
優奈、この休み時間中におしっこできなかったらほんとに漏らしちゃうってこともあり得るんじゃ…
まぁでもこのペースで行けば大丈夫か。
瑠奈がそう思ったときだった。

「あーーーーーもうこんなのおかしいよぉぉぉぉぉ」
突如泣き叫ぶ女の声。
「バーーーーーーーン」
乱暴に開けられる女子トイレのドア。
後ろを振り返ると、スカートの前を強く握りしめた1年生と思われる女の子が立っていた。加奈だ。
1年生の中でも生徒会にも属し、積極的な女の子。
そして行列の前に走って行った。
「1年生ばっかり理不尽じゃないですか!教室からここまで遠いのに!みんな我慢してるのは一緒なのに!
先輩たちずるいですよーーー!」

前に並んでいた2年生たちは唖然としている。
確かにトイレから遠いというのはある。しかしそれは何も2年生の子達が悪いわけではない。
それに2年生の子達も我慢はもう限界なのだ。
「あのね、ずるいって言われてもそれは…」
瑠奈たちのクラスメイトでもある先頭の鈴香が迫り来る波を抑えつつ、話しかけたときだった。

ザーーーーーー。
ちょうどそのとき一つの個室から水の流れる音がして、女の子がひとりでてきた。
それを見た加奈が走っていく。

「あっっっ!ちょっと!!!」
もう限界の鈴香は加奈を追いかけて走るがお互い我慢の限界の中、スタートが速いものが先に勝つのはもはや道理だ。
加奈が個室にたどり着き、鈴香の目の前でぴしゃりとドアを閉め、鍵をかける。
たまたま加奈が入った個室が和式だった。
神業のような速度で下着をおろし、しゃがんだのか、
ドアが閉まると同時に、「シャーーーーーージョボジョボジョボ」
と勢い良く出るおしっこの音と、着水する音がトイレに響き渡る。
加奈が本当に限界まで我慢していたのが良く分かる音だ。

それを個室の前で聞かされ、泣き叫ぶ鈴香。
「早く!!早く出て!!おかしいよ、こんなの!もう出ちゃうんだってばぁーー」
必死にドアを叩く。鈴香は次が自分の番だと思って必死に我慢していたのだ。
思わぬお預けをくらって膀胱が待ってくれるはずもなかった。

「ジョーーーーーーーー」
くぐもった音…液体が布を貫通する音が聞こえる。
がっくりと膝をつく鈴香。
その鈴香の周りに水たまりが広がっていったー。

あまりの光景に一瞬静まり返る女子トイレの中。
キーンコーンカーンコーン。
そんな中、悪夢の英語テストの時間を伝える鐘が鳴り響いた。

10分後。
瑠奈と優奈は椅子に座っていた。

あの後、担任の先生が鈴香のお漏らしを知り、
再度時間割が変更された。

今日の試験はこの英語が終われば終了。
最後の社会は翌日に延期になった。

ただ、瑠奈と優奈にとっても英語は最重要科目。
とてもじゃないが欠席するわけにはいかない。
チラチラと見えていたトイレの誘惑を振り切り、前を押さえたまま教室に帰ってきたのだ。

瑠奈は左手で前を押さえながら、右手で回答用紙を埋めていく。
ただでさえ苦手な英語はおしっこ我慢に脳みその95%を使っている瑠奈の状況では
全く歯がたたなかった。

それでもお漏らしをしないことだけを考えて、必死に耐える。
どんなにきつく足を組んでも、じわじわとちびってしまっている気がする。
これは汗なのかおしっこなのか。もはや瑠奈にはわからなかった。

テスト終了まで後30分。我慢できる自信は全くない。
こんなに我慢したのは人生で初めてかもしれない…。もうテストは諦めてトイレに行ってしまおうか。
瑠奈がそう思ったときだった。

「ガタッ」
突然隣の席で椅子が引かれる。
優奈だ。
チラッと横目で見ると両手でスカートの中から直接抑えていた。
「すみません…トイレに行ってもいいですか?」
先生に聞いている。
「今教室を出てしまうともうテストには戻れないがいいのか?」
「はい…すみません、もう我慢できなくて…」
「…よし。行ってきていいぞ。」
トイレに行くともうテストには戻れないこと、優奈は絶対知ってるのに。

もう本当に限界なんだ…あたしでもきついのにいつもトイレ近い優奈よく頑張ったよ…
こんなときでも律儀に教卓に回答用紙を出しに行こうとする優奈を
せっかくだからあたしの分までスッキリしてきてほしいと、目で見送っていたそのとき、
「パーーン!」
よく周りを確認できなかった優奈が、瑠奈と反対側の席の子の筆箱を落としてしまった。
そしてその子の筆箱は床に落ちて大きな音を立てた。
…そこまでだった。

ジャバジャバジャバジャバジャバー。
滝のような水流が床を叩く。
瑠奈は思わずそちらを見てしまう。
まるで下着をつけてないかのような激しい一直線の水流。
優奈の本気の我慢の結晶だった。
「ああああぁぁぁ」
思わず気持ち良さそうな声を上げ、しゃがみこんでしまう優奈。
1分たってもその水流は止まることがなく、じわじわと優奈を中心に巨大な水たまりを形成していった。

優奈のお漏らしを見たとき、
我慢している女子全員が一層強くあそこを抑えた。目の前でクラスメイトが失禁したのだ。つられてしまうのも無理ない。
それは瑠奈も例外ではなかった。
優奈のお漏らしのタイミングで今までで一番のおちびりをしてしまったのだ。
もうこれは絶対にテスト終わるまでは持たない。あたしもトイレに行こう。

「先生!あたしもトイレいかせてください。」
瑠奈は席を立ちながらそう言うと、回答用紙を机に置いたまま、後ろの扉からトイレに向かう。
後ろで教室がざわざわしているのが感じられるが、そんなことに構っている余裕はなかった。
「はやくはやく…」
もうおしっこは止められない。じわじわじわじわ漏れてきているのがわかる。

ただ、まだ決壊はしていない。
大丈夫。なんとかなる。そう自分に言い聞かせながら階段を降りる。

階段を1段降りるたび、ずんっと重量がかかる。
もう手は離せない。1歩1歩進んでいった。

トイレがみえてくる。
やっと、やっとおしっこができる。
あと少しー。

瑠奈は最後の頑張りとばかりに女子トイレのドアを開けた。

激しいノックの音。
もじもじそわそわと落ち着かないステップ。
バタバタバタと激しい足踏み。

トイレには3人の女の子が並んでいた。
おそらく全員が1年生。
瑠奈のように我慢できずにテストを抜けてきたんだろう。

瑠奈は目の前が真っ暗になりかけるが、なんとか前を抑える手に力を込め、
激しく足踏みをして耐える。

個室はたくさんある。
目の前には3人。
きっとすぐ順番はくる。

ザーーーーーーー。ガチャ。
ひとりでてくる。
列が進む。

ザーーーーーーー。ガチャ。
もうひとりでてきた。
あと瑠奈の前の女の子はひとり。

個室が2つ開けば瑠奈の番だった。

バタバタバタバタ。ガチャ。
うそーーー。
後ろに新たに人が並ぶ。
あたしのようにせっかく抜けてきたのに待つはめになって苦しそうな女の子がひとり。
やはりそわそわと落ち着きがない。

ザーーーーーーー。ガチャ。
次があたしの番だ。
どこが開いてもいい。とにかく!はやく!
個室が空いたら、すぐに駆け込んで、ドア閉めて、鍵かけて、あとは反転してスカート捲って、下着下ろして、座るだけ。
なんども頭の中でシュミレーションをする。

そして、20秒が過ぎた頃。
ザーーーーーーー。ガチャ。

鍵が開く音が福音のように響き渡る。
出てくる子を押しのけるように個室に入りながらさっきのシュミレーションを思い出す瑠奈。

駆け込んで、ドア閉めて、鍵かけて、あとは反転して…!?
反転した時点では確かにまだ我慢が出来ていた。

だけど、反転した瑠奈が見たものは、
座るための洋式のトイレではない。
しゃがまないとできない和式トイレだった。

あっと期待を裏切られる瑠奈。
一瞬の油断だった。
ジョバジョバジョバジョバー。
壊れた蛇口みたいに溢れ出す瑠奈のおしっこ。あっという間に下着を濡らしていく。

慌てて下着に手をかけ、しゃがみこむ。
ビッシャーーーーーー!!
レーザービームみたいなおしっこが和式トイレに吸い込まれる。
よかった!ちゃんとできた!
そう思った瞬間。
ビッシャーーーーーー!!
その勢いのまま今度は左にそれる。
「わわっ」
慌てて軌道を変えようとするが、力が抜けている瑠奈はうまく軌道修正ができない。
左足におしっこがかかってしまう。

「あああっ」
小さく悲鳴をあげた瑠奈はもうパニックだった。
ビシャビシャビシャビシャ…
床に溢れるおしっこ。
びしょびしょになる上履き。
大量のおしっこは個室の隙間から流れ出ていく。

せっかく間に合ったのに…。
瑠奈は個室の中で静かに泣くことしかできなかった。

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